official blog
型染絵作家 山﨑菜穂子さん
2022.04.24 Sunday
山﨑菜穂子さんは日々の気づきや風景をモチーフにされている型染絵の作家さんです。
神奈川県で生まれ女子美術大学を卒業後、金沢卯辰山工芸工房を修了し金沢で作品を制作されています。
独自の視点で図案を型におこし、型染の技法で染め上げます。
図案家でもあり、お店のオリジナル包装紙をデザインしていただきました。
今では、「山﨑さん」や「菜穂ちゃん」と名前を呼んで包装紙を選んでくださる方も。
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
日本の伝統技法の型染ですが、山﨑さんが染めて加工される作品は毎日使えるようなものばかりです。
ハンカチやバッグ、ポーチにエプロン。
普段何気なく見ている風景や物が山﨑さんの視点で切り取られ、はっとさせられたりクスッとさせられたりします。
可愛らしいといういう言葉ではおさまらない、とてもセンスのある作家さんです。
手前2つは「リンゴ」一番奥は「ヤマボウシの実」。
![]() |
|
![]() |
|
普段は気づかない果物の断面や道端に生えているツタの葉など、山﨑さんの視点でみるとどれも素敵なモチーフになります。
型染は表面に色を乗せるのではなく、糸を染めるため色に深みがあり裏も表もしっかりと染め上がります。
型紙を切り抜いた部分が境界になるため、キリッとした輪郭と山﨑さんのモチーフが絶妙な組み合わせです。
「型染は制限があって、自由すぎない所が面白い」と山﨑さん。
使う人には自由な発想を与えてくれる山﨑さんの型染絵。
山﨑さんが2014年に金沢卯辰山工芸工房を修了した時の展示は今でも忘れられません。
天井から掛けられた大きな何枚もの布。
風景を切り取った型染の布でした。
大空を見上げているような気持ち良さに感動したのを覚えています。
大きな布から生まれてくる型染絵、気づくことや楽しむことの大切さを教えてもらっているような気がします。
好日用品店 廣島友紀
KONOのドリッパー
2022.03.17 Thursday
我が家では2代目のKONOのコーヒーフィルターとグラスポット。
1代目のグラスポットの持ち手は黒のプラスチックでしたが、2代目はさくらの木の持ち手を選びました。
持ち手が木なので、かさついてきたら蜜蝋ワックス などを塗ると馴染みます。
KONO(コーノ)は、1925年創業の珈琲サイフォン株式会社が生み出した日本のブランドです。
親子3代にわたって受け継がれ、長年珈琲愛好家の間で親しまれています。
KONO式ドリッパーは円錐型のフィルターで、日本でペーパードリップが普及していなかった1973年に発売開始されました。
内壁のリブが短いためペーパーが張り付くので雑味のない飲みがたえがあるまろやかな美味しい珈琲が淹れられます。
珈琲の美味しい淹れ方は、鉢植えの植物の水やりと似ているなと感じます。
ジョウロで水をサッーと急いで与えてしまうと、鉢の底から勢いよく水がそのまま流れていきます。
最初にゆっくりと全体に水を撒いて、しばらく土が水を吸収するのを待ちます。
土がぽこぽと音をたて少し膨らんだらゆっくりと水をあげて、あとは流すようにぐるぐると水をあげます。
植物は冷たい水を好みますが、珈琲は80℃〜87℃ほどがおすすめです。
植物を育てるのが上手な方は、もしかしたら珈琲を淹れるのが得意かもしれませんね。
珈琲豆を挽いて、ゆっくりと淹れていただく。
その一連の動作がとても心地よい時があります。
無心になってただただ「おいしくなあれ」と。
![]() |
|
![]() |
|
美味しい珈琲を飲みたいけど、家庭では難しいと感じている方にこそおすすめです。
美味しい挽きたてのお豆さえ手に入れば、コクがあってまるみのあるすっきりした珈琲が淹れられます。
その時その時の気持ちの変化も珈琲の味にあらわれます。
何も考えずに無心に珈琲を淹れる時間は心身ともに大切な時間。
使うたびに嬉しくなる道具を使っての珈琲は、ますます美味しいものに感じられます。
好日用品店 廣島友紀
染織作家 樋口佳苗さんの織物
2021.12.09 Thursday
上質なウールやカシミアを用いてあたたかで包み込むようなストールやマフラー、手袋などを作られている樋口佳苗さん。
新潟県出身で女子美術大学を卒業後、東京の織物工場で働きながら自宅のお部屋にある織り機で手織りをされています。
金沢市で制作されていたこともあり、その頃からのご縁です。
樋口さんのストールを巻いた方は、みなさん「あっ」と言って心地よさを感じてくれます。
巻いた時の軽さや包まれる感覚は、人が持っている優しさにとても似ています。
人の手が作るぬくもり、愛情、優しさが伝わる織物です。
技術とセンスもすばらしく、随所に遊び心も感じられます。
織物工場では機械織り、ご自宅では手織りと、同じ織りの仕事で集中力が続くのが樋口さんのすごい所。
ご自身の制作では手織りの持つ魅力や表現の広がりを大切にされています。
両方の工程を知っているからこそ生まれてくる手織りの織物。
丁寧に織り分けられ、布の透け感やでこぼことしたテクスチャーも特徴のひとつです。
タテの糸とヨコの糸から織られる織物。
デザインを考え、糸を選び時には染色し、丁寧に下準備に時間をかけます。
そして、調和やバランスをみながら織りすすめていく。
樋口さんの経験という多くの引出しが作品に生かされています。
良いことがあった日もそうでなかった日も樋口さんの織物は、ふわっと包み込んであたためてくれます。
いつもそばで寄り添ってくれるそんな存在です。
好日用品店 廣島友紀
陶芸家 中嶋寿子さんのこと
2021.08.06 Friday
お店で取り扱いのある中嶋寿子さんは、陶土を使って作品を製作をされています。
神奈川県の出身で女子美術大学工芸学科を卒業後、2011年に金沢卯辰山工房を修了されました。現在は石川県で制作をされています。
陶の独特の表情や作品の世界観、そして中嶋さんの人柄にたくさんの方が集まります。
モノから人へ、人から人への繋がりや広がりを実感させてくれる作家さんでもあります。
中嶋寿子さんの作品は、まず石こうで型を作ります。
出来上がった型に、ちぎった土をや砕いた土の粉を中側に貼り付けていきます。
型と型を合わせる部分に土を盛り付けくっつけます。そして、時間を置いてはずし素焼きにします。
型は同じでもひとつひとつ表情が違うので、お客さまは探すようにご自分の気に入ったものを選ばれます。
陶板は、手動の機械で土をのばし布を敷いて板枠にはめこみます。
表面に、ちぎった土を貼り付けたり、砕いた土の粉をまぜます。
ナイフで絵型を切り抜き、その部分に土を埋めていき出来上がったら素焼きにします。
陶板は、正面から見ると版画のような壁画のような独特の表情です。
壁飾りや壁のタイルとして中嶋さんの作品を使用しているお店が金沢にはたくさんあります。
「好日用品店」の陶板(表札)は中嶋寿子さんが作ってくださいました。
まだ3年ほどですが、長い年月がたったような風格が漂っています。
オブジェなどは、ひとつひとつのパーツを細かく制作されています。驚くほど、細かい作業をおひとりでされています。
用途が違っても、その物が持つ雰囲気は変わりません。
土の中から発掘されたような古い昔からあるもののような。
中には、海岸に流れついたような漂流物のような作品もあります。
どの作品も静かに息づいている生き物のように感じます。
お住まいから離れた場所にある古い繊維工場の奥の片隅で、静かに制作されています。
ひんやりとした空間に古いラジオと作業用の机。
大きな木槌や粘土。石工の型がごろごろと転がっていました。
中嶋寿子さんとはお店をする前からの10年以上の付き合いです。
出会った頃に彼女の制作した大きなオブジェと出会い衝撃を受けました。
原始的で力強く、人を引き寄せる魅力に溢れていました。
現在は、ブローチや花器、器、壁掛け、小さなオブジェなども制作されています。
目にするたびに嬉しくなり、そばに寄り添ってくれる存在。
進化し続ける中嶋寿子さんの作品、生まれてくるのが待ち遠しいです。
好日用品店 廣島友紀
伝えたい布もの
2021.07.12 Monday
お店で取り扱いのあるSuno&Morrison。
Suno&Morrisonは、福岡に住む齋藤由清乃さんがはじめたブランドです。
オーガニックコットンのガラ紡を中心に、インドの手紡ぎ手織りの布やベトナムのカゴなど、実際に使ってみて気持ちよいと感じた糸や素材でものづくりをされています。
ガラ紡とは、ガラ紡機と呼ばれる紡績機で紡いだ糸のこと。
明治時代、糸が貴重だった時代にくず糸を再び糸として再生させるために作られました。
当時は水車で動いており、現在は電力で動きますが仕組みは当時のまま。
量産型の紡績機におされ、徐々に衰退し現在は2、3件で稼働しているのみとなりました。
材料を余すことなく大切にする昔の人の知恵がつまった布。
そして、なにより驚くほどの柔らかさと軽さ。触れるたびに気持ちよさを実感できます。
冬は暖かく、夏は通気性があり速乾性にも優れています。
手紡ぎの手織りのカディはインドで作られています。
使い込むほどに柔らかくなっていく楽しみがあります。インド糸は発色がとても綺麗です。
齋藤さんがデザインをし配色をすることで、さらに魅力のある布となります。
色の組み合わせが絶妙で、とても洗練されています。
ガラ紡やカディのあまり布で、赤ちゃん用のスタイやぬいぐるみを作られています。
布もの以外にもベトナムで作られたカゴやマットなども、生活に溶け込むような品物が揃ったブランド。
齋藤由清乃さんは、穏やかで芯が通った魅力的な女性です。
初めてお会いした時から、齋藤さんのお人柄に魅力を感じ背景のあるものづくりをお伝えしたいと思いました。
世の中の状況が落ち着いたら、紡績機がある一宮にもぜひ訪れてみたいです。
好日用品店 廣島友紀